飛べればいいのに

 GWに会って気まずくなってしまった友達と、こう着状態が続いている。僕の何気ない発言が彼の心持を悪くしてしまったので、こちらから「また会おう!」などと軽薄なことを言ってもさらに関係が悪化するような気がして(当然向こうからは何もないので)、簡単に言うと「音信不通」である。でも、それも仕方ないのかなあとさえ思い始めているこの頃だ。

 自分から連絡を取るということが少なくなったのは「あまり相手に迷惑をかけたくない」という理由だけど、これはたぶん体裁で、一番大きな核は「勇気が出ないから」だ。こう考えていると、ふと思い出すことがある。

 高校三年生がほぼ終わろうとする頃、クラスの女の子が他の女子たちに囲まれて泣いているのが見えた。なんで泣いているんだろうとふと疑問に思いながらも、そこを通り過ぎてそのまま帰宅した。数日後、その彼女がとある美大へ受験しに行くために卒業式に参加できないのだと知った。そういえば、あの日から彼女の姿を見かけない。だから泣いていたのか、みんなとお別れを言っていたんだ...といろんなことが理解できはじめて、だんだん名残惜しさが募ってきた。高二の頃から同じクラスで割と喋ったし、面白い人だと思っていた。大学へ進学したら、もう会えないかもしれない。それがちょっぴり哀しくなって、勇気を出してその子の友人に彼女のメールアドレスを教えてもらった。

 今考えるとびっくりするくらいの勇気だ。早速メールを送信した。しばらくして、返信があった。それから何回かやり取りをしているうちに、彼女だけの卒業式をやるから来てほしいと言われた。僕は、もちろん行くと返事をした。そのときの写真が、スマホに残っている。先生を含めて10人の極めてこじんまりとした卒業式だった。卒業証書授与のあと、担任の先生からいろんなプレゼントを貰い、それからみんなで写真撮影。一時間もかかったろうか、とても短い時間だったけれど、彼女とちゃんとお別れを言えてよかった。と言いつつも、ちゃっかりラインを交換した。やり取りはごくたまにある。向こうからすぐに「ばいばーい」というスタンプが送られてくるので、とても楽だ。

 もう会えないかもしれない、と思うと、途端に勇気が湧いてくるものなのか。バンジージャンプの気分と似ていた。ええい、飛んでしまえ!という、諦めにも近い勇気。そうやって飛んでみたおかげで、彼女のところまで届いていけたのだ。うん、僕は今たかいたかい橋の上でうだうだしている。もう少し、風の調子を見ようかな。