ユーモアしちゃうよ

 最近、ラーメンズのコントを見るのが楽しい。「不透明な会話」や「読書対決」、「無用途人間」がとても面白くて、何回も見返してそのたびに声を上げて笑う。個人的に、第5回公演「home」あたりの小林賢太郎さんの顔が好きだ。片桐さんはそんなに変化がなくて微笑んでしまう。今も、「百万円」というコントを見ながらこれを書いている。ラーメンズのコントは、言葉の面白さやだんだんと深みに入っていく笑いがたまらない。

 人は、笑うためにテレビを点けて番組を見る。お金を払って劇場へ向かってコントを見る。どこか、「笑う」ということを生活の中で求めているような気がする。会話をしていても、自然と笑いを取りたくなる(関西人特有のものかな)。そして、相手が笑ってくれた時には矢張りうれしい。つい昨日も友達と電話していて、二人でげらげら笑っていた。

 大学一年生のときに、ナチ治下のドイツのことを習った。ヒットラーがどのように権力を持ち始め、それをどう行使し始めたのか。けれども僕が一番興味深かったのは、その当時のドイツ市民のジョークだ。ジョーク。それはただの「駄洒落」ではなく、「政治的ジョーク」だ。例えば、ドイツの空軍元帥ゲーリング(この人は肥満体だったらしい)についてのジョークを一つ。「日本とゲーリングの違いはどこか」「日本は微笑みの国だが、ゲーリングは国の笑いものさ」。彼らの、支配者に対するジョークは結構辛らつで、身体の障害や思考力の欠陥を笑いの種にしていた。一番多いのはヒットラーについてのジョークで、音楽や宗教と関連したものや、他の独裁者と比較したものまで本当に多様にあったようだ。ドイツ市民はユーモアをもって支配に対抗しようとした。またユーモアは、自分たちの気分を解放するためでもあった。

 つい先日どこかで知ったのだが、イギリス、BBCのニュース番組がとある日の放送の最後にセックス・ピストルズの「God Save the Queen」を流した。それは一体なぜか。保守系の議員がBBCに対し、「EU離脱のしるしとしてイギリス国歌を流すべきだ」と要求したのだ。その答えが、国歌と同名のピストルズの曲を流す、というもの。僕は面白くて仕方なかった。

 ユーモアは、ある時には人間関係を滑らかなものにし、また違う時には権力に立ち向かう武器になる。たしか、笑うという行為自体も心理学的によいことだと『笑いの治癒力』という本で読んだことがある。そうか、友達と話すとほおっと落ち着いた気分になるのは、笑いの効果だったのか。たぶん来週末も友達と電話をするだろう。それまでちょっと、笑いの種を集めておかないと。