化ける

 大学にいると自然と気づくんだけど、だいたいの女の子が化粧をしている。不思議なのは、高校のときは化粧をしている子が目立ってたのに、大学だと今度はすっぴんの子の方が目立つのだ。なんか、女の子って大変だよねえ、そこんところ。毎朝鏡の前で女の子が化粧をしている姿を想像すると、戦の前に鎧をまとっている感じがする。あと、自分の肌にどの色をのせたら一番きれいか考えているのは、画家みたいですごい。あ、僕も一度女装をしてみたことがあるけど、なんだかふわふわした、どきどきした感覚を覚えたものだ。できるなら、もう一回してみたい...。うん。

 僕は化粧が濃いのよりナチュラルに近いのが好きですが、化粧によって顔が七変化してゆくのは、なんか、魔法に似たものを感じる。ちょっと紅をさすだけで色っぽくなるのだ。ほんとうに、女性はおそろしい。

 「化粧」という漢字に「化ける」が入っているのは面白い。「化ける」といえば、役者さんもすごいなあと思う。僕が好きなのは堺雅人さんなんだけど、『半沢直樹』と『リーガルハイ』の振り幅の大きさを見るとわかる。堺雅人さんを知ったきっかけは伊坂幸太郎さん原作の『ゴールデン・スランバー』だったんだけど、堺さんが必死に逃げ回るさまはほんとうに面白いので観ていただきたい。

 僕は堺雅人さんのことをなんにも知らない。なんにも知らない分、画面の中の堺さんを、演じているままに受け取ることができる。まあ、エッセイ買いましたけどね。高尚な方だなあと、しみじみ思いましたけどね。

 ふと「自分」というものを考えたときに、「これ」と言い切るものがないのに気づく。たとえば、「自分は楽観的で、ポジティブな人間です」とか長所を述べるときに言うけど、四六時中楽観的な人間はいないはずだ。だからか、いつもは強く振舞っている人がふいに見せる弱さ、もろさに心が持っていかれそうになる。あれはなぜなんだろう。ギャップに弱いのかな。いつもは元気はつらつって感じの子がネガティブなこと言ってたら、やっぱり気になる。でも、なんていうかそういうのは、人の弱さに付け込んでいる感じがして、そっと見守ることしかできない。心理学で学んだけど、自分が弱っているときに誰かに優しい言葉をかけられたら恋に落ちやすいらしい。お気を付けください。

 真面目そうな人のスケベな面を見ると楽しい。ほんとはスケベなのに、普段はかっちりとした服を着て涼しそうな顔をしているのは、ある種「化ける」ということなんだろうね。...うん、くだらない。