丸く、柔く

 すべてのことにやる気が起きない。面白い本を捲ってもすぐに飽きてしまう。甘いコーヒーを飲むこと以外楽しみがない。また身体が丸く、柔くなっている。シャワーを浴びるために服を脱いで、鏡に映る自分を見たときの情けなさ。ゴムボールみたいに膨らんで、いくらでも触っていられる。

 ああ、そうだ。やる気が起きないんだった。今はもう連休のことしか頭に浮かばない。春の暖かさにやられたのかもしれない。やらなくちゃいけないことも、考えておかないといけない未来もあるのだけど、どうでもよく感じられる。仲のよさそうな人達、賢明な人達。歩けばすぐに目に入るその景色も、ちょっと靄がかかっている。自分はそんな大そうな人間じゃない。

 耳にするニュースがどれも憂鬱で、そのニュース番組の構造もまた同じくらい憂鬱で、疲れてくる。だからもう、たけのこご飯や天ぷらを食べて、春の道を散歩するだけの日々を過ごしたい。久しぶりに詩でも考えながら、離れていく影を見送ったりして。