星野源はパンクだった(過去形)
僕が星野源の名前を知ったのは2012年だった気がする。
アネッサのCMでなんだか爽やかな曲が流れ、理由もなくお気に入りになった。
それが「夢の外へ」だった。
たしかMステに出演してるのをみて、「もっとおっさんだと思ってたけど、めっちゃ普通に好青年やん」と思ったような、思ってないような。
ただし、このシングルは買っていない。
2013年になり、星野源はパーマになった。僕は、星野源が2012年の暮れにくも膜下出血を患ったとはつゆも知らず、テレビから流れてきた「化物」を普通にいい曲だと思い、アルバム「Stranger」を買おうと決意した。
その後、「働く男」という本を買い、「そして生活はつづく」というエッセイを買い、星野源に没入した。
アルバムを買わなければ、となぜかファーストの「ばかのうた」ではなくセカンドの「エピソード」を購入した。
最初は、「Stranger」との違いにびっくりしたが、それなりに気に入っていった。
その頃の僕は学校が少し嫌だった。クラスの雰囲気だとか、苦手な体育だとか、すごく些細なことでストレスを感じていた。
学校から帰ったあと、あの「エピソード」を流し、その曲のある詩が耳に残った。
「さらば人気者の群れよ 僕は一人で行く」……。
何気ない言葉だけど、すごく救われた。「変わらないまま」という曲だった。その頃の星野源は、なんというか、すごくパンクだった。繊細な歌声で、生々しくて少し狂った歌詞をうたって、僕は心を打たれていた。今になって思うけど、あの時の星野源は少し無茶していたのかな。
二度目の休養中に発売された「地獄でなぜ悪い」はなんだか嫌な予感を連れて、聞いていてすごく気持ちいいのに心配してしまった。戻ってくるのかな、と。
でも、そんな心配は要らなかった。
パンクな心は薄らいだけれど、その分ポップになって帰ってきた。街を歩いていると、どこかから「恋」のメロディが聞こえてくることがある。みんなのうたになった気がしている。